ここではケース別の遺言書の文例を上げているページです。遺言者の意思を法律の範囲内で最大限に反映できるようにしたつもりです。みなさんの参考になれば幸いです。
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妻に全財産を譲りたい
妻に全財産を譲りたい。この場合だけでもいくつかのパターンが存在します。
そのうちで代表的な以下について見ていきましょう。
1.子供がいる
2.子供はいないが自分の両親がいる
3.子供も両親もいないが自分の兄弟姉妹がいる
1.子供がいる
子供がいる場合は、子供の遺留分が存在するため、全財産を妻に譲るのが難しくなります。
しかし、人間は感情の生き物です。人の感情にうったえかける事で子供に相続の放棄をしてもらう可能性を高くすることが可能です。
ポイント1
「遺言者の全ての財産を妻○○に相続させる」と記述する
ポイント2
「子○○へ。今まで妻○○には本当に苦労をかけてきた。せめてこれからの生活には苦労をかけたくないと思っている。どうか今回は相続を放棄して欲しい。そして、妻○○を見送った後に仲良く分けて欲しい」
のように感情にうったえかけえるとともに、後に相続ができるので大丈夫だというような記述をする。
もちろんこれらは法的拘束力はありません。相続開始後、子が遺留分減殺請求をすると遺留分だけは渡さなければなりません。
しかし、上記の記述を入れることで相続を放棄してもらう可能性を高くすることが可能です。
上記ポイントを押さえた遺言書の文例はこちら
2.子供はいないが自分の両親がいる
こちらも子供がいる時と同様に自分の両親には遺留分が存在するため、全財産を妻に譲るのがむずかしくなります。
しかし、こちらの場合も理由を記述して感情にうったえかける方法を使う事で両親に相続の放棄をしてもらう可能性を高くすることが可能です。
ポイント1
「遺言者の全ての財産を妻○○に相続させる」と記述する。
ポイント2
「両親へ。今まで本当にお世話になりました。感謝しています。しかし妻○○には本当に苦労をかけてきたので、せめてこれからの生活には苦労をかけたくないと思っている。どうか今回は相続を放棄して下さい。」と記述する。
上記ポイントを押さえた遺言書の文例はこちら
3.子供も両親もいないが自分の兄弟姉妹がいる
この場合は簡単です。自分の兄弟姉妹には遺留分がありません。
よって妻に全て相続させると書くだけでその通りになります。
ポイント1
「遺言者の全ての財産を妻○○に相続させる」と記述する。
上記ポイントを押さえた遺言書の文例はこちら
妻と子にそれぞれ財産を譲りたい
この場合、相続人の遺留分を侵害しなければ簡単な部類に入ります。
法定相続分は妻が1/2、子は1/2を兄弟で分けます。
ポイント1
法定相続分どおりにすると争いが起きにくい
上記ポイントを押さえた遺言書の文例はこちら
子の相続分に差をつけたい
子の相続分に差をつける時は争いが起きやすくなります。
慎重に考えて相続分を指定した方が良いです。
ポイント1
なるべく子の遺留分を侵害しないように記述する
ポイント2
相続分に差が出る納得の行く理由を記述する
例
- 「老後の世話をしてくれたから」
- 「これから残された妻の世話をしてくれるから」
- 「借金の肩代わりをしてあげるなどしたから」
ポイント3
もし財産をあたえたくない子がいる時は、相続人の廃除を行う事になるが、相続人の廃除は相当の理由がいるのでその証拠も残しておく
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隠し子を認知したい
遺言によって、隠し子を認知することが出来ます。認知する事によってその子も法定相続人になる事が出来ますし、その相続分も通常の子と同じになります。(平成25年法改正)
また、認知しようとしている子が成年の時は本人の承諾が必要で、胎児の場合は母親の承諾が必要です。
ポイント1
子の母親が誰であるかを明記する
ポイント2
認知する子の住所、氏名、生年月日、本籍、戸籍の筆頭者を記述する
ポイント3
遺言執行者が認知届を提出するので、遺言執行者を必ず指定する
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非嫡出子にも嫡出子と同じ相続分にしたい
非嫡出子にも嫡出子と同じ分だけ財産をあたえるという事はトラブルの原因にもなりそうですが、平成25年法改正により、嫡出子と同様の権利が認められ、法定相続分が同じになりました。
そのため、法律上は同じ分配にしても問題ありません。
相続させる場合は遺留分に注意して記述していただければと思います。
相続人のパターンによっては遺留分を侵害せずに均等に分割する事ができます。
例えば相続人が妻、嫡出子2人、非嫡出子1人の場合には通常は以下のような相続分になります。
相続分
|
遺留分
|
|
妻 |
1/2
|
1/4
|
嫡出子(兄) |
1/6
|
1/12
|
嫡出子(弟) |
1/6
|
1/12
|
非嫡出子 |
1/6
|
1/12
|
この子の遺留分が1/12と言うところがポイントです。
子の相続分を均等にするとそれぞれの相続分は1/6になります。
という事は遺留分を侵害しないことになり、均等に分けても法律上は問題ないことになります。
ポイント1
遺留分には細心の注意をはらう
ポイント2
非嫡出子は認知していないと法定相続人にならないので、認知しておくか遺言で認知する
上記ポイントを押さえた遺言書の文例はこちら
子に会社を継がせたい
ここでは、同族の株式会社の場合を例に上げておきます。
同族の株式会社の場合、株式を身内、親戚だけで持っていると思います。
そこでポイントとなるのは、会社を譲ろうとしている遺言者が会社の株式を半分以上持っているかという事になります。
もし半分以上持っている場合は、その株式も会社を継がせる子に相続させましょう。
できれば会社の全株式の50%以上を相続させてください。
そうしなければ、のちのち会社を相続した子は他の株主から代表取締役の座を降ろされる場合があります。
ポイント1
会社を継がせたい子には全株式の50%以上を相続させる
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息子の嫁にも財産を譲りたい
息子の嫁は法定相続人ではありません。
いくら老後に世話になって財産を分けたいと考えても遺言書がなければそれもかなわないという事になります。
それを遺言書を書いて、遺贈すると言う形にすれば息子の嫁に財産を分ける事ができます。
ポイント1
「長男・○○の嫁・○○に次の財産を遺贈する」のように記述する
ポイント2
法定相続人の遺留分に十分注意する
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内縁の妻にも財産を譲りたい
内縁の妻は法定相続人ではありません。
よって、遺言書がなければ財産を相続できない事になります。
そこで遺言書を作成して、内縁の妻に遺贈するという形になります。
ポイント1
「内縁の妻の名前、生年月日、住所を記述して、次の財産を遺贈する」というように記述する
ポイント2
法定相続人の遺留分に十分注意する
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お世話になった人に財産を譲りたい
お世話になった人に財産を譲りたいと思ったら、内縁の妻と同様に法定相続人ではないために、遺言書が必要になります。
ポイント1
「遺贈したい人の名前、生年月日、住所を記述して、次の財産を遺贈する」というように記述する
ポイント2
法定相続人の遺留分に十分注意する
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財産を寄付したい
自分の財産の全部または一部を公益法人などに寄付する事もできます。ただし、法定相続人がいる時は遺留分に十分に注意する必要があります。
トラブルを起こさないためにも遺留分より多めの財産を法定相続人に残すほうが無難です。
ポイント1
「遺贈先の名称、住所、理由を明記して、次の財産を遺贈する」というように記述する
ポイント2
法定相続人の遺留分に十分注意するトラブル防止の為、遺留分より多く財産を法定相続人に残す
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条件付で財産を譲りたい
遺言書では、条件付で財産を譲るということもできます。
例を上げると、長男には遺言者の妻の面倒を見るという条件で他の兄弟より多く相続させる場合などです。
それでは、「この条件に強制力はあるのか?」という疑問が出てきます。
実際にはこの条件を満たさなくても遺言書に書かれてあるとおりの相続になります。
「そんなの意味ないじゃないか!」となりそうですが、ここからがポイントです。
条件を満たさずに相続した場合、他の相続人が以下の事をできます。
- その条件を履行する事を求める事ができる
- それでも一定期間で履行しない場合は、家庭裁判所に遺言書の取消を請求できる
ポイント1
財産を譲る条件を他の人が見ても分かるように具体的に明示する
ポイント2
他にも相続人がいる場合は、遺留分に十分注意する
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